こんにちは!ゆきみん(@yukimin_jp)です。
今日は、ドキュメンタリー映画『アリ地獄天国』を観て感じたことをお話しようと思います。
ドキュメンタリー映画『アリ地獄天国』とは
もう既に劇場で鑑賞された方もいらっしゃると思いますが、ドキュメンタリー映画『アリ地獄天国』について先に少しご紹介。
皆さんの記憶にも新しい「とある引越し会社でのパワハラ問題」について、その一部始終を記録した作品です。
被害に遭われたご本人が職場環境の改善を求めて個人加盟型の労働組合に加入し、3年にも渡る戦いを追った、ありのままのドキュメンタリー映画。
この出来事についてニュースで見聞きしたことはありましたが、並行してドキュメンタリー映画を撮影されていたことは知らなかったので、とても驚きました。
編集もすごくシンプルで、偏りのないとてもまっすぐな作品。
事実が事実として、そのまま入ってきます。
ニュースで見るのと実際の映像を見るのでは、大きな違いがある
ドキュメンタリー映画「アリ地獄天国(@ari2591059)」を鑑賞。
苛立ちで途中何度か泣きそうになった。
真面目で誠実な人こそ、会社のルールを人権の上に立つものだと思い込んでしまう。思い込まされてしまう。
仕事が人としての尊厳を奪うなんて、絶対にあってはならない。
— ゆきみん|yukimin (@yukimin_jp) June 13, 2020
昨今ニュースでも多く取り上げられているパワハラ問題。
話に聞くだけ、文章で読むだけでも「許せない」と憤る気持ちが湧いてくるものですが、この作品はまさにその被害に遭われたご本人に密着して撮影されたもの。
ニュースで見るよりももっとリアルです。
ネット記事に書かれた罵詈雑言も、文字で読むのと実際の映像を見るのとは感じ方が全然変わってくると思います。
真面目で誠実な人こそ、会社のために身を削るほど努力する
この映画の主人公・西村有さん(本名:野村泰弘さん)は、営業職でトップの成績を誇る正社員でした。
ところが、あることをきっかけに突然シュレッダー係を命じられます。
私はこの流れを見ていて、もちろん会社側の理不尽極まる行動にも驚いたのですが、それ以上に驚いたのが西村さんの真面目さ、誠実さでした。
シュレッダー係、です。
粉塵が舞う場所で紙をシュレッダーに入れ続け、ゴミを出し、またシュレッダーの場所へ戻っていく…
これを朝から晩までやるんです。
給料は半減。
途中映し出された給与明細の賞与欄には「20円」…。
自分だったらどうだろう。
私なら、おそらくシュレッダー係を命じられた時点で逃げると思います。
こんな会社辞めてやる!って、辞表も出さずに逃げると思います。
でも西村さん、逃げないんですよ。
それどころか、「大体この紙の束だとシュレッダーにこのくらいの時間がかかるなあ、って分かってきたんですよ」と。
「シュレッダーの周りは粉塵が舞うからマスクしてるんです」と。
与えられた仕事に対して、どこまでも真面目なんです。
きっとこの真面目さ・誠実さがあったから、営業でもトップの成績だったのでしょう。
この様子を見ながら、私は苛立ちで何度も泣きそうになりました。
会社は、会社の中にいる人は、真っ直ぐな人の心を見くびりすぎです。
真面目だから、何を言っても指示通り動くと思っているのでしょうか?
だから理不尽な弁償金を提示したのでしょうか?
幸い、西村さんは会社が想像するよりも遥かに誠実で真面目な方でした。
だからこそ結果的には組合と共に会社と戦い、社会を変えることを選びました。
でも。
真面目で誠実な人が同じように理不尽な目に遭ったとして、果たして西村さんと同じ行動ができる人はどれくらいいるでしょうか?
「理不尽な扱いをされたら、然るべきところに相談する」
これは当たり前のことに見えて、実はかなり難しいのではないかと思います。
まず、
「会社のルールがおかしい」ことに気付くこと。
「上司が間違ったことを言っている」と気付くこと。
これが結構難しい。
真面目で誠実な人こそ、会社のルールが人権の上に立つものだと思い込んでしまう。
思い込まされてしまう。
こういうことって、割と身近にあるのではないでしょうか。
私自身、「会社のルールが第一」「上司の言うことが絶対」だと思っていた時期がありました。
会社員だった頃、会社で嫌なことがあるとよく母親に電話していました。
大体聞き流されていたのですが、時々「え?何それ?」と返ってくることがあったんです。
「それ、ちょっと変じゃない?」と。
そんな時、母親に
「上司が言ってることはおかしいよ」
「常識で考えてみなさい」
とどれだけ言われても、私は聞く耳すら持ちませんでした。
「うちの会社のこと全然分かってへんやん」
「上司は周りからもすごいって言われる人やねん」
そんな言葉を返すだけで、全然本質を見ることができていませんでした。
相談したくて電話してるんじゃない、ただの愚痴やから聞いてくれるだけでええねん、と。
結局私が自分の間違いに気付いたのは、上司からの一言で心をえぐられた時。
その瞬間今までのことが全て頭の中を駆け巡り、言い方は悪いかもしれませんが、まさに「洗脳が解けた」ような気持ちでした。
言葉でガッとえぐられて、初めて気付いたんです。
ここで気付かなかったらずっと自分を責め続け、常に上司の顔色を伺いながら会社生活を送る、つまらない毎日を送っていたと思います。
この映画で取り上げられているように目を見張るほどの酷いケースでなくとも、大きな問題に発展する「芽」は皆さんの身近にも意外にたくさんあると思うんです。
自分自身はもちろん、周囲にまだ気付いていない芽がないかどうか、常に注意を払っていきたいですよね。
世界でも注目されている日本の労働問題
この映画はもちろん日本の劇場で上映されているのですが、私はウェブ上で鑑賞しました。
というのも、こちらの映画はNippon Connectionという映画祭に出展されているんですね。
現在私はポーランドに住んでいることもあって、ウェブ上で観ることができました。
(権利の制限があり、鑑賞できる国は限定されているようです。本来は映画館で上映のはずでしたが、コロナの影響で1作品6ドルのチケットでウェブ配信になりました)
ポーランドに来てからもう1年が経とうとしていますが、周囲に日本に関心が強いポーランド人が多いのもあってか「日本の労働問題」について聞かれることがしばしばあります。
実はこの映画も、ポーランド人の友人に教えてもらって知りました。
日本といえば、アニメ!漫画!寿司!止まりなのかと思いきや、そんなことはなく…。
日本大好き!と目を輝かせながら「でも日本の会社では絶対に働きたくない」と言う友人が何人もいます。
結構、ショックです。
ポーランドでは深夜残業なんて大問題。
午後4時には会社をでてくる人たちで地下鉄が混み合います。
転職はステップアップとされ、一つの会社でずっと働き続ける人の方が稀です。
もちろん国民性やこれまでの歴史など考慮すべき点は様々ありますが、それでも「日本の会社は昔からこうだから仕方ない」という見方はもう古すぎるのかもしれません。
「働き方改革」を政府が掲げてから、月日もかなり経ちました。
でも、政府や会社の動きを待っているだけでは改革なんて起きない。
この映画に携わった皆さんのように、一人一人が改革を起こすことが、今の社会で一番大切なことなのではないかと思います。