日記

チョコクロが好き過ぎる

 

私はサンマルクカフェが提供する「チョコクロ」という食べものが本当に好きで、なんというか、このチョコクロに対する好き具合というのは、他の食べものに対する好きとはまったく別物なんである。

最近まで3年ほど中欧・ポーランドで暮らしていたのだけれど、お寿司よりラーメンより、何より恋しかったのはチョコクロだった。

いや、分かる。ヨーロッパには素敵な菓子パンの類がそこかしこに溢れている。しかし、しかしです。私が恋しいのはいつだってチョコクロだった。クロワッサンもチョコも手に入る。でも、そんなのは全然ダメ。チョコクロじゃないと、全然ダメです。

 

 

なぜこんなにもチョコクロは私の心を捉えて離さないのか、随分長い間疑問だった。確かに私はクロワッサンもチョコレートも好きで、好きと好きの組み合わせだからそこには純粋な好きが成立するんであって、それで何も問題ないはずだけれど、思えば好きと好きの組み合わせなんてのは何もチョコクロに限ったことではない。世の中には「トースト&バニラアイス」や「小倉あん&生クリーム」といった、「組み合わせ」により生み出された罪深き食べものが多数存在し、日々私たちを誘惑してくる。そして言っちゃあなんだが、チョコクロはとても、とてもというか、超ド級のスタンダード、王道も王道の組み合わせであり、クロワッサンにチョコを合わせれば美味しいなんて、古今東西、老若男女問わず既知の事実。生まれる前から知ってた。

にも関わらず、私のチョコクロに対する執着心は常識の域を少々越えており、チョコクロのためならバスや電車を乗り継ぎ、片道1時間半かけて遠くのサンマルクカフェまで行ってしまう。交通費片道780円。チョコクロ1つ190円。狂ってる。家の近くにサンマルクカフェがない。

しかもそこでチョコクロの大食いを始めるのかというと、それは違う。チョコクロはひとつでいい。私はふだん外で飲食するとき、大抵片手に本またはスマホを手にしてしまうのだけれど(よくないね)、チョコクロだけは別で、両手で持って、ちゃんと前を向いて食べる。ちなみに、ゆっくり味わって食べる、とかはないです。ペロッといきます。

今日もそんな感じでチョコクロを頬張り、んまーい!と思ったところで、なぜ自分はこの食べものがこんなにも好きなのか、人に好きな食べものを聞かれて「チョコクロ!!」と答えた後、その理由を一体どう説明すればいいのかと悩み始めた(もう好きな食べものとか聞かれる歳じゃないけどさ)。

それで思い出したのは、高校時代のこと。高2の時、私にはとても好きな人がいた。恋愛の話は苦手なのでこのへんはサクッといきたいのけれど、恋人的存在だった彼(そういう関係だったかどうか確認もしなかった。淡いな)の家に初めて行った時、私が手土産に持参したのがチョコクロだった。チョコクロは持ち帰り用だと5個入りの箱を用意してくれるんで、彼、お父さん、お母さん、弟さん、そして私の分。そう思ってね。いや、分かる。5個って。ギリギリ。ま、高校生が用意できるお土産としてはコストを切り詰めての結果、内容、インパクトともにこれ以上は思い付かなかった。

 

チョコクロが好き過ぎる

 

で、家に着いて「これ一応さ、持ってきたよ」とチョコクロの箱をそっと渡し、手を洗いに洗面所へ行き、戻ったところへ目に飛び込んできたのは口の周りにクロワッサンの食べカスをたくさん付けた彼だった。

テーブルもポロポロと落ちたカスですごいことになっており、既に2つのチョコクロが消えていた。私は漫画みたいに目をぱちくり、こういうときはどう反応するのが最適なのかと焦った次の瞬間、彼が「これ、おいしいなあ!!」とそれまで見たことのなかった、ぱああああっと輝く笑顔で言うもんだから(いつも難しい顔をしてる人だった)、私もとっても嬉しくなって、残りのチョコクロをおいしいね、おいしいね、と言いながらぜんぶ一緒に食べた(彼、計4つ。私1つ)。これは私の中では彼との1番の思い出で、でもそんなこともう、忘れちゃっただろうな。最近、風の噂で結婚したと知って、おめでとうと言いたいけど連絡先も分からない。

もうひとつ思い出したのは、会社員だったときのこと。あの頃の私は何もかもが本当にうまくいかなくて、こんな言い方良くないかもだけど、あの4年間は死にながら生きてるような感覚だった。身体は生きてる、表情も、動作も、やるべきことも、生きてる人と同じように。でも私の一番大事な部分はいつも死んでいて、それで、職場にも飲み会の席にも、当時住んでたアパートの部屋にさえ自分の居場所なんかないような気がして、仕事終わりにどこに帰っていいのか分からず、ふらふらと歩いて辿り着いたのがサンマルクカフェだった。周りに何もないような場所に、ぼうっとオレンジ色の明かりが灯っていて、店内はとても暖かそうに見えた。あの日の東京は春先で、まだまだ寒かった。

 

カウンターにはきれいに並べられたチョコクロが置いてあって、死んでるくせにおなかが空くのは、まだ人間であるという証拠だなあと、私は少し嬉しくなって、チョコクロ1つとホットコーヒーを注文した。

席に座って、チョコクロを食べた。おいしかった。おいしくて、そして懐かしかった。そのせいで、ちょっと悲しい気持ちにもなった。

その日から私は、残業でとても遅くなる日以外、仕事帰りに毎日そのサンマルクカフェに通い、毎日チョコクロを食べた。とても素敵な店員さんもいた。彼はすべてをしっかり確認する人で、いつも小さな声で指差ししながら「チョコクロ1つ、オッケー。コーヒー1つ、オッケー。Sサイズ、オッケー。おしぼり、オッケー。スタンプは…」と私をチラリと見、私が紙のカードを差し出すと、ぽん、と小さな犬の絵のスタンプを押してくれて、「スタンプ、オッケー。」と安心したように次の作業に移る。彼を見ているとなんだかすごくホッとして、ここは自分の居場所だと思ってもいいような気がして、いい場所を見つけたと、私は心からそう思っていた。彼の確認項目の中に「私が来る」ということが入ってるといいな、とも思った。そのカフェで本を読んだり、何かを紙に書いてみたり、店内に流れるジャズに耳を澄ませたりするのは、あの頃の私にとってかけがえのない時間だった。店員さん、元気にしてるかな。

 

チョコクロが一等好きな理由は、多分こんなところです。

好きなもののことって、真面目に答えたら結構長くなるんだね。

皆さんの好きな食べものは何ですか?

 

これまでの日記

(そういえばこのブログの配色、サンマルクカフェだわ…。今気付いた)

チョコクロ チョコクロを食べると思い出す 偽物の夜の色が 知ってる明日に変わるところを チョコクロを食べると思い出...
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